人工電磁波と生物の関係

 

生物にある電磁波感知能力

多くの生物が、私たちが日常的に感じる刺激や熱をもたらすような強い電磁波だけでなく、はるかに弱い電磁波をも感知できることが近年の研究で明らかになっています。また、人工的な電磁波が生物に悪影響を与える可能性が懸念されています。

渡り鳥のナビゲーション能力

渡り鳥が数千キロメートルを移動する際、太陽や星を頼りにするだけでなく、地球の磁場を感知していると考えられています。以前は、鳥のくちばしにあるマグネタイト(磁鉄鉱)が方向磁石の役割を担っているとされていましたが、2012年の研究でこれは否定されました。この研究では、マグネタイトを含む細胞が実は免疫細胞であり、磁気感知には関与していないことが明らかになりました。

有力視される「クリプトクロム」説

現在、有力視されているのが「クリプトクロム」説です。渡り鳥の目にあるこのタンパク質は、弱い磁場に反応して情報を脳に伝えることで、地球の磁場を「見る」能力をもたらしていると考えられています。この理論は、人工電磁波が渡り鳥の磁場感知を阻害することも説明できます。

 

実証された結果

ノルウェーやスウェーデンに生息するヨーロッパコマドリに対する実験では、1~10MHzの電磁波にさらされた結果、わずか85nTという低い値で渡りの方向感覚が混乱することが確認されました。この85nTは、スウェーデンのディスプレイ規格における許容値200nTよりもはるかに低い値です。

マグネタイトが磁気感知に全く関与していないわけではなく、クリプトクロムと共に連携して磁場を感知している可能性も示唆されています。この新たな理解は、電磁波が生物に与える影響をより深く理解し、関連する技術に役立てるための道筋を示しています。

人は磁場や電磁波に鈍感ではない

2016年、カリフォルニア工科大学の研究チームは、動物に備わっている地球の磁場を知覚する能力が、実はヒトにも存在する可能性があると発表しました。この発見は、ヒトの脳が地球の磁場を感知できることを示しています。

被験者を「ファラデーケージ」という外部の電場や電波を遮断した空間に座らせ、空間を完全に暗くしました。脳波計を用いて、被験者の脳が磁場の強さの変化にどのように反応するかを測定した結果、磁場が反時計回りに回転すると、被験者のアルファ波が減少することが分かりました。これは、磁場の変化に対して被験者の脳が反応し、興奮している証拠です。

この研究結果は、人類が動物的な生活をしていた太古の昔、磁気を感じて方角を知る能力を持っていた可能性を示唆しています。しかし、現代人にとって磁気感知の能力はあまり必要とされず、その結果としてこの能力が衰えているのかもしれません。

こうした背景から、ヒトが他の動物よりも電磁波に対して鈍感である可能性が考えられます。しかし、この研究が示すとおり、ヒトにも潜在的に地球の磁場を知覚する能力が備わっていることは、今後のさらなる研究への期待を高めるものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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